
新たな在留資格の創設 2027年には技能実習から育成就労へ
技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度は抜本的に見直され、人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されます。
育成就労制度は「人材確保」と「人材育成」を目的とした新たな制度として創設され、外国人労働者が日本の職場でより主体的に活躍し、技術を学ぶだけではなく自らのスキルを発揮し貢献する役割が期待されています。
また、外国人労働者の監理・支援・保護が厳格化し適正に行われるよう設定されます。
特定技能の前段階として育成就労で受入れた後に特定技能へ移行し継続した就労ができるようになります。企業側も長期的な視点で人材育成が可能になり定着率の向上も期待できます。
今後ますます外国人雇用は高まっていくと思われます。
育成就労制度は2024年6月21日から3年以内(2027年)に政令で定める日に施行される予定です。
これに伴い、在留資格「技能実習」は廃止されますが、施行日までに技能実習生として入国した場合、一定の範囲で資格変更が認められる経過措置が設けられます。
育成就労制度の受入産業分野一覧
育成就労の対象となる産業分野は、原則として特定技能の産業分野と一致します。
ただし、就労を通じて技能を修得させることが相当と認められる特定産業(生産性向上や国内人材確保を行ってもなお、外国人の受入れが必要な分野)の17分野に限られます。
| 分野 | 業務区分 ※緑字(追加予定) | 技能実習との比較(追加区分) |
|---|---|---|
| 介護 | 介護 | |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング | |
| 建設 | 土木/建築/ライフライン・設備 | 建設:鉄筋継手 |
| 造船・舶用工業 | 造船/舶用機械/舶用電気電子機器組立 | |
| 自動車整備 | 自動車整備/車体整備 | 車体整備 |
| 宿泊 | 宿泊 | 企画・広報業務 |
| 鉄道 | 軌道整備/電気設備整備/車両整備/車両製造/運輸係員/駅・車両掃除 | 車体整備 |
| 農業 | 耕種農業/畜産農業 | 稲作・畑作・育苗、家きん・養牛 |
| 工業製品製造 | 機械金属加工/電気電子機器組立て/金属表面処理/紙器・段ボール箱製造/コンクリート製品製造/RPF製造/陶磁器製品製造/印刷・製本/紡織製品製造/縫製 電線・ケーブル製造/プレハブ住宅製品製造/家具製造/定型不定形耐火物製造/生コンクリート製造/ゴム製品製造/かばん製造 | 電気電子機器組立:ビーズ法発泡スチロール成形プラスチック成型材料製造 陶磁器製品製造:排泥鋳込み成形 紡織製品製造:製網、染色 縫製:カーテン製造 家具製造:家具組立、マットレス製造、シート縫製 |
| 漁業 | 漁業/養殖業 | |
| 飲食料品製造 | 飲食料製品製造業/水産加工 | 水産加工(加熱、乾燥、低温処理、水産練り加工) |
| 外食業 | 外食業全般 | |
| 林業 | 林業 | |
| 木材産業 | 木材産業 | |
| リネンサプライ | リネンサプライ | |
| 物流倉庫 | 物流倉庫 | |
| 資源循環 | 廃棄物処理業(中間処分業) |
育成就労制度の就労期間と転籍条件
育成就労の期間は原則3年間で、この期間に特定技能1号相当の技能水準の習得を目指します。
また、外国人労働者の権利保護の観点から一定の条件のもとで外国人本人の意向による、同一の業務区分への転籍が認められる予定です。 (2027年4月以降入国の外国人が対象)
| 転籍制限期間 1年の分野 | 転籍制限期間 2年の分野 |
|---|---|
| ・ビルクリーニング ・リネンサプライ ・宿泊 ・鉄道 ・物流倉庫 ・農業 ・漁業 ・林業 ・木材産業 | ・介護 ・工業製品製造業 ・建設 ・造船・舶用工業 ・自動車整備 ・飲食料品製造業 ・外食業 ・資源循環(廃棄物処理) |

育成就労外国人の要件
育成就労制度のもとで受入れが可能な外国人には、以下の要件が課されます。
・二国間取決め(協力覚書(MOC))を締結した国からのみ受入れが可能
・就労開始前に日本語能力A1相当(日本語能力試験N5等)に合格、又は相当する日本語教育機関の日本語講習を受講が必要
・原則として家族の帯同は認められない
・2年以上の技能実習を行った外国人が再度来日し、育成就労制度で働くことは原則不可

技能実習制度の経過措置
育成就労制度の施行日までに技能実習生として入国した外国人は、一定の範囲で継続でき、その後の在留資格変更も認められます。また、施行日前に認定申請を行っている場合、技能実習生としての入国が可能なケースもあります。

入国後講習における日本語教育について
外国人労働者が日本で安全かつ円滑に職務を遂行できるよう入国後講習を実施します。
講習内容
技能実習制度で採用されてきたカリキュラムをそのまま引き継ぐ形で構成されます。
ただし、日本語教育や総時間数などは育成就労制度に応じて定められます。
日本語要件(就労開始前までに必要)
育成就労者はいずれかの条件を満たす必要があります。
・日本語能力 A1 相当以上の試験に合格
(例:日本語能力試験 JLPT N5)
・認定日本語教育機関(就労課程等)での日本語講習を100時間以上受講
経過措置(当面の取り扱い)
登録日本語教員による講義を100時間以上受講すれば、上記の受講済みとみなされます。
同時に授業を受ける生徒は20名以下で日本語教育が適正かつ確実に実施される体制で行われること。
監理支援機関はより厳しい基準の許可制へ
監理・支援・保護機能の強化に伴い許可要件も見直され、より適切な体制が求められます。
育成就労制度において監理支援機関は主務大臣の許可を得た上で、国際的なマッチング、受入企業(育成就労実施者)への監理・指導、そして育成就労外国人の支援・保護等を担います。
さらに、外国人本人の意向による転籍が可能となるため関係機関との連携や調整等の役割も担うことになります。
新たな要件
・受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与制限
・外部監査人の設置義務
・受入れ機関数に応じた職員の配置
具体的な要件詳細については、今後更に検討されます。
企業が育成就労制度を導入するメリット
育成就労制度は、企業が未経験者から実務を通じて育成しながら雇用を確保できる仕組みです。
人材不足が深刻化する中、育成就労制度を活用することで実践を通じて企業のニーズに合わせた育成が行えます。
◎外国人労働者は企業理念や業務フローを理解することで組織になじみ長期的な雇用定着が期待できます。育成就労で受入れた後に特定技能へ移行し上位の特定技能2号を取得すれば、母国から家族を呼べ日本で永続的に就労を続けることも可能になります。
◎外国人労働者の監理・支援・保護が適正に行われるよう強化され、労働環境の安定化、生産性の向上、違法やトラブルリスクの回避に繋がります。一定のスキルや資格取得への支援が強化され、より高度な業務や昇給のチャンスが広がり目標を持って仕事に取り組む好循環が生まれます。
今後ますます外国人雇用は高まっていくと思われます。
育成就労制度への新たな監理支援機関として
外国人材の受け入れ環境が大きく変わる中、当組合はこれまでの支援経験を活かし、監理団体・支援機関体制を更に強化し、育成就労制度においても受け入れ企業様と外国人材の双方が安心できるサポートを行ってまいります。
新制度の対応や受け入れに関するご相談はぜひ当組合までお問い合わせください。




